4月16日に、緊急事態宣言が全国に拡大されたことを受けて、四国霊場八十八か所で一部を除き、多くの寺の境内や納経所を閉鎖する旨のニュースをテレビで見ました。
四国霊場を廻る「お遍路」は、昔から四国に根付く世界に誇れる文化でありますが、こんなところにもコロナは翳を落とすのかと考えさせられました。
私は、13年前の4月~5月に25日かけて
自転車で四国霊場を廻ってきました。
徳島の1番霊場「霊山寺」~23番までの「発心の道場」(徳島県)、24番~39番までの「修業の道場」(高知県)、40番~65番までの「菩提道場」(愛媛県)、そして66番~88番の結願寺「大窪寺」までの「涅槃の道場」(香川県)まで、約1400キロの道程でした。
前年の3月に、腎盂癌により左腎臓を摘出したこともあり、体力に一抹の不安がありましたが、行く先々での人々との交流-暖かい「お接待」に励まされ、何とか通しで廻れたことが今でも貴重な思い出として残っています。
四国霊場巡りは、本来は、お大師様との「同行二人」で、弘法大師に対する信仰に基づくものですが、私の場合は、各寺を巡って納経帳へご朱印を押してもらうスタンプラリーのような不純な感覚で始めました。
根無し草のように遍路宿に泊まる非日常的生活を毎日続けている中で、納経帳のページが埋まっていくのが楽しみでしたが、一方で、各寺の本堂と太子堂で「般若心経」を唱えることを続けるうちに、不思議なもので、心の中が洗われるような感覚さえ受けるようになりました。
四国霊場巡りに納経は、欠かせないものでありますが、コロナ禍は、四国を巡り優しい人たち、険しい山・坂、美しい海・新緑と巡りあい、納経する楽しみを、人々から奪ってしまうという悲しいことになっています。
一刻も早く、四国の文化が日常的に復活することを願って已みません。
尚、この文が出るころには、納経所は開かれているかもしれません。
ただし遍路宿は、お遍路さん同士および土地の人との交流・情報交換の場であり、「密閉」「密集」「密接」のいわゆる「三密」が、楽しみの一つでもありますので、今後暫くは元の「お接待」文化に戻るのは、残念ながら、時間がかかるかもしれません。
シリアスなコロナ問題の渦中、時宜にかなった内容ではないと思いますが、13年前に自転車で感じた四国の風を思いだしながらこの文を書いています。
コロナ禍が去った何時か 皆さんも「お接待」されに行きませんか
(追記)
5月14日に四国全県に対する緊急事態宣言が解除されたため、納経所は以前と同様な時間帯で開かれることになったようです)
了