酷暑を逃れた多くの都会人で溢れる軽井沢に、老境の5人の塾員が集まった。
政治学科M組のリーダー格でありながら早逝したK君を悼みつつ未亡人を囲みその別荘で傘寿祝いをしようとの計画であった。
鬱蒼とした森林に包まれた古民家は多くの年代美術品や家具調度と共に、自然との調和が、心和む雰囲気をもたらしていた。
往年、時折同席していた長男がすでに60歳を迎え、母を介護しつつ、会席設営をしてくれた.事業成功した証を表す様に送迎饗応にそつなく、夕食は都内から呼び寄せたシェフのお手前付き懐石料理をいただき一同堪能しつ懐旧の話題に盛り上がった。
翌日、配慮によるホテル一泊後名残惜しみつつ散会したが、帰宅後メールにて、
息子R君と礼文を交換し、その一言で彼の真情を知り心打たれた。
それは「皆様に会いたいと言う母の念願を達成できて嬉しい.遠くまできてくれて感謝します」と言うものであった。母の歩行や所作の寄り添い、何かと気を遣っていた息子の姿を思い返しつつ彼の深い優しさに触れた思いがした。
いまこの世の中であまり見かけなくなった「親孝行」と言う文字が浮かんでくる.それがこの様な形で実行されたことに感動した。
日本の伝統である家族への思いやり、父母への敬愛が忘れられることなく、この国で脈々と育っていくことを願いたいと思う。
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