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「東京2020オリンピックの見どころ」と題し講演会を開催!!――陸上競技と水泳競技(主に水球)を中心として――

2020東京オリンピックは1年順延され、ギリギリまでトラブル続きでしたが、コロナ禍という厳しい環境下で開催否定派の声も多い中、何とか開会に漕ぎつけました。開会式で特に印象に残ったのは、最終聖火ランナーが大阪なおみ氏だったことです。まさに、多様性の象徴として栄誉の役割を担ったものと思われます。また、聖火ランナーに王貞治氏と長嶋茂雄氏と松井秀喜氏が登場したことは我々世代の英雄としてとても感慨深い一瞬でした。



このような背景の下、令和3年7月26日(月)、新所沢公民館5・6号室にて「東京オリンピック2020の陸上競技と水球を中心に一部競泳の見どころ」というテーマで杉本会員(当会会長・元日本陸連理事)と山本健会員(ローマオリンピック水球選手)を講師に講演会を開催しました。コロナ禍の開催なので、集客を懸念しましたが、19名のご参加をいただき、改めて会員の皆様のオリンピックへのご関心の高さを痛感しました。講演は先ず杉本会員から「陸上競技の見どころ」を多彩なコネクションからの情報と科学的見地からの見解などを織り交ぜての大変内容のある話となりました。

「日本最速ランナー変遷史(1964年~2021年)」と「陸上トラックの変遷」についての説明に始まり、注目すべき見どころとして【男子100m】についての「山縣亮太(塾員)選手はメダルをとれるか?」というとても興味ある話がありました。最も有力な米国勢は薬物違反や予選落ちで戦力ダウンしており、後輩山縣選手の入賞は十分可能性があり、さらにメダルへの期待まで高まっているとのことです。塾員注目です。

更に注目される【4×100mリレー】競技の見どころはまさに「金メダルへの期待」です。その際に、タイム向上のカギとなるのが走順です。そのため、陸連は選手の調子を見極めて決める方針で、前日か走るその日に決まります。陸連は金メダルが悲願なので、選手に忖度しないとのことで、ギリギリまで走順は発表されないとのことです。




(走順の注目点)

・第1走への期待――レース全体の流れをつくれ、スタートダッシュに長け、コーナーワークに優れている事

・第2走への期待――バトンを受けてからの加速が上手くスピードの絶対値が高い事、持久力が高く長い距離をトップスピードが維持できる事、走りがきれいで比較的200mランナーに向いている事。第2走はチームの「エース的存在」

・第3走への期待――スタンディングからのコーナー走が得意で、コーナーリングが抜群に上手く、どんな順位でも焦らず自分の走りができる事

・第4走への期待――スピードの絶対値が高い事、直線の競り合いが強い事、フォームより力強さ・メンタルの強さが秀でている事、フィニッシュ技術が上手い事


(出場予定選手の個々の特徴)

・サニブラウン選手――絶対スピードが高い事、後半減速が少ない事、持久力が高い事、そして競り合いに強い。

・多田選手――スタートダッシュが抜群で、全体的な流れを作るのが上手く、1走のコール名前を呼ばれるのが好きな目立ちたがり屋。

・桐生選手――バトンパスが抜群に上手く、左足体重ということもあってカーブ走が抜群でありたぶん世界一ではないかと思われる事、目立ちたがり屋でもある事、走力に自信もある事などからアンカーを希望。

・小池選手――慶應競争部出身の後輩で基本的には200mランナーであり、競り合いは滅法強く、全カレで4×400mリレーを走りましたがアンカーでの競り合いの強さは伝説的でした。この時、山縣選手は2走で、そして慶應が優勝しています。さらに、カーブ走は上手いのですが、バトンパスはそれ程得意ではないようです。

・山縣選手(100m日本記録保持者)――スタートダッシュは抜群に上手く、走力の絶対値は高く安定感は抜群であり、持久力も高い。

(予想走順)

これらの貴重な情報に基づいて予想される確実にメダル取りにいける走順は、1走が多田選手、2走が山縣選手、3走が桐生選手、4走:小池選手です。サニブラウン選手は復調がカギであり、4走がサニブラウン選手になればさらに強くなると思います。また、桐生選手の足首の回復度合いにより3走が桐生選手に代わり小池選手になることもあり得ます。面白い走順は1走が山縣選手、2走がサニブラウン選手、3走が桐生選手、4走が小池選手だと思います。そして、金メダルを狙う最強走順として考えられるのが1走が山縣選手、2走がサニブラウン選手、3走が小池選手で、4走が桐生選手、という布陣です。陸連はこの走順をベースに考えているふしがあるとの事です。

(利得距離)

タイム向上のもう一つのカギとなるのが「アンダーパス」というバトンパスです。時速40㎞という走るスピードの中、声をかけて2歩で渡す技術力の高さは特筆です。そして、アンダーパスでも利得距離(総合タイムから個々の合計タイムを差し引いたもの)を稼ぎます。ポイントとなるのは渡すコツで、次の走者がいかに走りやすい状態で渡す事ができるかが重要です。相当時間を費やして練習していると思いきや、代表合宿でのバトンパス練習は1週間程度で、区間練習は失敗しても1日2本程度で、合宿中に1-2回だそうです。


他の競技では【男子200m】の優勝候補はアメリカの世界ランキング1位のライルズ選手と世界ランキング5位のナイトマン選手で、彼がまだ高校生であるという事に注目します。日本からの出場選手はサニブラウン選手で世界ランキング13位です。サニブラウン選手は決勝までは行けると思います。体調次第で、もしかしたらメダルの期待もあります。

【男子110mハードル】では泉谷駿介選手にメダルの期待があります。彼はハードル間のインターバルが早く、 “忍者のインターバル” といわれ、4台目のハードルで勝負がつくといわれています。金井大旺選手もメダルが期待されます。【男子110mハードル】は黒川和樹選手が入賞期待です。【男子3000m障害】は三浦龍司選手が決勝に進出し入賞が期待されます。【男子4×400mリレー】で日本勢は1走がウォルシュ・ジュリアン、2走が飯塚翔太選手、3走が佐藤拳太郎選手、4走が若林康太選手という走順で、決勝に進出し入賞が期待されます。【走り幅跳び】は橋岡優輝選手のメダルへの期待があります。【20km競歩】は山西利和選手が金メダル候補として期待しています。他に池田尚希選手や高橋英樹選手もメダル候補です。【50km競歩】は世界ランキング1位の川野将虎選手に金メダルが期待されます。また、丸尾知司選手にもメダル期待がかかります。【女子20km競歩】は藤井奈々子選手が現在絶好調であり、メダルが期待されます。【男子マラソン】は大迫傑、中村匠吾、服部勇馬の各選手、【女子マラソン】は鈴木亜由子、前田穂南、一山麻緒の各選手が出場。

日本陸連が期待するメダル獲得予想は金メダルが男子20km競歩、男子50km競歩、男子400mリレーです。また銀と銅メダルは男子110mハードル、男子走り幅跳び、男子20km競歩、男子50km競歩です。そして、総メダル数の期待値は7~8個です。最大の希望はぜひ山縣選手にメダルをとってもらいたいと思います。

最後にこれまでの慶應義塾大学出身オリンピアンは133人(延べ数)でオリンピック・パラリンピックのメダリストは金6・銀13・銅9(延べ数)となります。




次にご登場いただいたのが山本健会員です。山本氏は元水球選手で1960年のローマオリンピックに出場したオリンピアンです。当時のオリンピック水球選手は日大と慶應(4名)が主体となり、プロペラ機で36時間かけてローマに到着しました。しかし到着直後、即、練習試合が始まり、時差もあり敗退しました。最終的に予選リーグで3敗してオリンピックは終了しました。ローマオリンピックが開催された1960年はまだまだ国難の時代であり、絶頂のアメリカの強さで押し切られた感があります。ちなみに山本さんはキーパーでした。

今回のオリンピックでは、先ず平泳ぎで幼稚舎からの慶應義塾大学現役である佐藤翔馬選手に注目してください。残念ながら【平泳ぎ100m】は予選落ちでしたが、【平泳ぎ200m】で巻き返しを期待します。平泳ぎの絶対王者だった北島康介氏の跡を継ぐ人材です。ぜひ皆さん応援をよろしくお願いします。尚、瀬戸大也選手は最後の自由形で力を抜いてしまい、他が迫ってきたので再度慌てたが筋肉が元に戻らず敗退しました。

【水球】で注目するのは【女子水球】の徳用万里奈選手で所沢出身の早稲田OBでディフェンスの中心選手です。オリンピックに出場する唯一の所沢出身者なので、ぜひ皆さん応援してください。自分が専門の【男子水球】はかなり力をつけてきています。残念ながら無観客という事でホームタウンという優位性が失われていることが残念です。しかし若手ですい星のごとく出現した強力なシューターである稲葉悠介選手に注目してください。彼のシュートは時速75kmといわれ、ヨーロッパリーグで得点王になっていますので、期待されます。

水球のプールは30m×20mのプールで2m以上の深さがあり、プール底に足は尽きません。だから実質1時間を超える時間いっぱい泳ぎっぱなしなので、マラソンに次ぎ心臓負担が激しい競技ですが、激しい疲労の為、少々のタイムや選手交代の可能です。ゴールは水面から90cm高で横が3mあります。攻撃時間は30秒でそれ以内にシュートしなければならず、キーパーの2m前まで近寄れます。水球は「水中の格闘技」といわれ、水中ならば急所撃ち以外はなんでもOKだそうです。水の外で殴ったりけったりした場合は永久追放になるそうです。ただ一点残念なのは塾生や塾員がいない事ですが、このチームは塾指導者から引き継がれた技術を持ち、塾が日本の水球発祥校としての伝統を保ちつつ、日本水球会に寄与している実績は生き続いています。

このように、あまり一般に知られていない水球のルール解説をしていただき、大変為になりました。これからのテレビ観戦に資すれば幸いです。

今回は、皆様に東京2020オリンピックをより楽しんでいただくための講演会をタイムリーに催しました。

ぜひ皆様には講演会でのお話をご参考にしながら東京オリンピックを満喫していただければと思います。

文責:伊藤芳康(S51経)

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